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非鉄金属向け抵抗溶接
非鉄金属向けの抵抗溶接は、非鉄金属の持つ「良好な熱伝導性」と「低い電気抵抗」から専用の電極が使用されています。この専用電極には「とても高い電気抵抗」が必要になり、硬度や熱耐性が不十分な銅合金ではすぐに交換が必要になってしまいます。
対象物 | 発熱量 | 熱伝導率 | 電気抵抗 | 作業電流 | 作業サイクル |
非鉄金属 | 低 | 高 | 低 | 大電流 | 長い |
鉄系金属 | 高 | 低 | 高 | 低電流 | 短い |
アルミ | 低 | 高 | 低 | 中電流 | 短い |
非鉄金属向け抵抗溶接の電極には、タングステン(W)やモリブデン(Mo)やその合金が高温耐性の点からよく使用されています。また複合材も多くの装置に対し効果的で、軸部分は導電性を効率化し、先端部をタングステン(W)やモリブデン(Mo)等にすることで摩耗や高温に対応します。
高融点金属を使った電極の利点
- 高温下での安定した硬度
- 高い電気抵抗
- 低い熱伝導
- 低付着率
- 低い化学反応性
タングステンやモリブデン電極の使用分野例
- 自動車部品
- 電子部品(家電用部品) 等


材質別高温下の硬度変化について
左記グラフでは各材質の硬度変化について表していますが、どの温度帯でも最高硬度を保っているのはタングステン(W)になります。
モリブデン(Mo)はタングステンよりも低い硬度になりますが、タングステンよりはクラックや熱衝撃に強い傾向があります。
モリブデン(Mo)はタングステンよりも低い硬度になりますが、タングステンよりはクラックや熱衝撃に強い傾向があります。
材質紹介
純タングステン(W)
- 99.9%(3N)以上の高純度
- 金属で最高融点
- どの温度帯でも最高の硬度
- 加工時やヒートショックによるクラックリスクがある
- 他金属との低い化学反応
- 高い電気抵抗
純モリブデン(Mo)
- 99.9%(3N)以上の高純度
- 高融点金属
- タングステンよりは少ないクラックリスク
- タングステンよりは低いが、どの温度帯でも良好な硬度
- 他金属との低い化学反応
銅タングステン(Cu25-W75)
- 銅とタングステンの両方の特性を期待出来る
- 高温下での適度な硬度
- タングステンやモリブデンよりも良好な導電性
銀タングステン(Ag35-W65)
- 銅タングステンに似た特徴を持つ
- 高温下での適度な硬度
- 良好な導電性
- ステンレスやニッケルの箔への溶接に適する
TZM合金(Ti0.5-Zr0.08-Mo99.4)
- モリブデンにチタンとジルコニウムを添加
- 高融点金属
- 高い腐食耐性
- モリブデンよりも高い硬度
- 良好な熱伝導と電気抵抗
微細熔接用電極と特殊電極

微細抵抗溶接加工には高品質な電極が不可欠です。電極の素材には、再結晶化温度が高く、高い熱伝導性と導電性を備え、高温下での安定した性能が求められます。
仕上がり面への悪影響を及ぼす要因として、電極作業面への温度衝撃や物理的衝撃による品質劣化が一般的です。
高純度の高融点金属を電極にすることで品質改善に期待出来ます。
仕上がり面への悪影響を及ぼす要因として、電極作業面への温度衝撃や物理的衝撃による品質劣化が一般的です。
高純度の高融点金属を電極にすることで品質改善に期待出来ます。
材質 | 組成 % | 密度 g/cm3 | 導電率 %IACS | 硬度 HB | 融点 ℃ |
タングステン | 99.9 | 19.3 | 30 | 400-450 | 3387 |
モリブデン | 99.9 | 10.2 | 30 | 195 | 2623 |
TZM | Ti0.5-Zr0.08-Mo | 10.1 | 28 | 230-250 | ~2500 |
CuW | Cu25-W75 | 14.7 | 45 | 195-210 | ~1000 |
点付け溶接電極
CuCrZr(銅・クロム・ジルコニウム)
- 軟鋼材やステンレス、ニッケル合金、真鍮、青銅等への溶接に適しています
CuCoBe(銅・コバルト・ベリリウム)
- 高合金材、ニッケルクロム合金、純クロム、モネル材(NiCu合金)への溶接に適しています
CuCrZr+W(銅・クロム・ジルコニウム+タングステン)
- タングステンを先端に接合した複合品です
- 非鉄金属への溶接に適しています
CuCrZr+WLa10 (銅・クロム・ジルコニウム+タングステン・ランタン)
- タングステンにランタン(La)を添加した合金を先端に接合した複合品です
- 銅や銀への溶接や抵抗ろう付け、ホットバー溶接に適しています
CuCrZr+Mo(銅・クロム・ジルコニウム+モリブデン)
- モリブデンを先端に接合した複合品です
- 銅材や銅線、銀接点やその他導電性金属への溶接に適しています
CuCrZr+TZM (銅・クロム・ジルコニウム+チタン・ジルコニウム・モリブデン)
- モリブデン合金のTZMを先端に接合した複合品です
- 銅や微細箇所、その他導電性金属への溶接に適しています


D | d | L | CuCrZr | CuCoBe | CuCrZr+W | CuCrZr+WLa10 | CuCrZr+Mo | CuCrZr+TZM |
3 | 2 | 40 | − | − | − | − | ○ | − |
3 | 3 | 40 | ○ | ○ | − | − | − | − |
4 | 4 | 30 | ○ | ○ | − | − | − | − |
4 | 4 | 75 | ○ | ○ | − | − | − | − |
6 | 2 | 50 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
6 | 3 | 50 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
6 | 4 | 50 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
6 | 6 | 50 | ○ | ○ | − | − | − | − |
10 | 3 | 75 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
10 | 4 | 75 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
10 | 6 | 75 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
10 | 8 | 75 | − | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
コンポジット電極

抵抗溶接用コンポジット電極は、異なる機械特性や物理特性の材料を高精度加工と安定した接合技術により組み合わせ、問題の解決や品質向上に期待出来ます。
コンポジット電極は,一般的なベリリウム銅(CuCoBe)のみの電極に比べ大きく優れた特性を持っています。装置や条件により異なりますが数十%以上長い寿命を期待出来、人体に有害なベリリウムを含んでいないため、作業の安全性も向上出来ます。
コンポジット電極の使用例とし、プロジェクション溶接、突合せ溶接 等
コンポジット電極は,一般的なベリリウム銅(CuCoBe)のみの電極に比べ大きく優れた特性を持っています。装置や条件により異なりますが数十%以上長い寿命を期待出来、人体に有害なベリリウムを含んでいないため、作業の安全性も向上出来ます。
コンポジット電極の使用例とし、プロジェクション溶接、突合せ溶接 等
プロジェクション溶接用電極
異なる2種の金属を組み合わせることで溶接用電極に改善を加えました。CuCrZr電極は効率的に電流を作業部に伝え、同時に溶接にて発生した熱も効果的に放熱します。電極は常に放熱し350℃以下を保ち、溶接品質の向上に期待出来ます。

材質 | 組成 % | 密度 g/cm3 | 導電率 %IACS | 硬度 HB | 軟化開始温度 ℃ |
CuCrZr | Cr>0.4-Zr>0.03-Cu | 8.9 | 80 | 160 | 450 |
CuW | Cu25-W75 | 14.7 | 45 | 220 | ~1000 |
CuCoBe | Co2-Be0.5-Cu | 8.8 | 18 | 230-250 | ~480 |
改良型 バック・キャスト電極
独自の改良を施したバック・キャスト電極は、高品質・長寿命・高効率・高安定性を実現し品質改善に期待出来ます。バック・キャスト電極は軸部分と先端部分の接合方法を改良し、従来のろう付けと比較し高い導電性と熱伝導性を有し、安定した品質向上と電極寿命も改善されています。
従来のろう付けでは、先端部と軸部分の間に接着剤としてろう材が使用されますが、このろう材が原因で抵抗を不安定にさせ、品質や冷却性能にも悪影響を及ぼし電極寿命の低下の一因となります。
従来のろう付けでは、先端部と軸部分の間に接着剤としてろう材が使用されますが、このろう材が原因で抵抗を不安定にさせ、品質や冷却性能にも悪影響を及ぼし電極寿命の低下の一因となります。


ろう付け電極の問題改善のため開発されたバック・キャスト電極は、先端部と軸部分の間に金属粉を充填し真空炉内で焼結させています。均一な接合面になることで2つの材質間に隙間やムラ、破損や汚染も発生しません。ろう材を排除することで、電極の熱抵抗を銅の融点と同等まで高められ、電極の放熱性能も大幅に上昇させます。
このバック・キャスト電極は高速自動溶接機に最適な電極です。
このバック・キャスト電極は高速自動溶接機に最適な電極です。
Cu | CuCrZr | タングステン | モリブデン | 標準電極 | バック・キャスト電極① | バック・キャスト電極② | |
硬度と耐久性 | ★ | ★★ | ★★★★ | ★★★★ | ★★★★ | ★★★★★★ | ★★★★★★ |
低腐食・付着性 | ★ | ★★ | ★★★ | ★★★ | ★★★ | ★★★ | ★★★ |
熱抵抗 | ★ | ★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★ | ★★★★ | ★★★★★ |
熱伝導率 | ★★★★★ | ★★★★ | ★ | ★ | ★★ | ★★★ | ★★★ |
導電性 | ★★★★★ | ★★★★ | ★ | ★ | ★★ | ★★★ | ★★★ |
電極寿命 | ★ | ★ | ★★★★ | ★★★ | ★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
溶接電極先端部の長さと発熱量
電極先端部の長さが長くなるほど発熱量は増加しますが、最高温度到達と冷却にかかる時間が増加します。タングステン銅電極の非常に優れた熱伝導率は冷却速度を向上し、加工速度と安定性を高めます。グラフは電極先端部の長さに応じて到達できる最高温度と、300℃までの冷却にかかる時間を表しています。


タングステンとモリブデンのクラック耐性
電極を継続して使用していると表面に亀裂が入る危険性が高まります。
タングステンは高温下での十分な硬度と機械的強度を有していますが、反面脆く熱衝撃に対し少し弱い特徴を持ちます。この弱点が微細な傷やマイクロクラックを発生させ、大きな亀裂形成に繋がる可能性があります。
モリブデンやTZM合金には、タングステンよりは優れた熱衝撃と機械的衝撃に耐性があり、亀裂が発生し作業中に悪影響を受けるリスクを低減します。しかし、タングステンよりも高温下での硬度が低いので、ひび割れ以外の変形や摩耗速度の上昇可能性が高まります。
タングステンは高温下での十分な硬度と機械的強度を有していますが、反面脆く熱衝撃に対し少し弱い特徴を持ちます。この弱点が微細な傷やマイクロクラックを発生させ、大きな亀裂形成に繋がる可能性があります。
モリブデンやTZM合金には、タングステンよりは優れた熱衝撃と機械的衝撃に耐性があり、亀裂が発生し作業中に悪影響を受けるリスクを低減します。しかし、タングステンよりも高温下での硬度が低いので、ひび割れ以外の変形や摩耗速度の上昇可能性が高まります。
抵抗加熱溶接のトラブルと原因の可能性

作業現場
- 誤った設定値
- 不適切な材料位置
- 電極状態不良
- 設定値と実作業の差異

電極
- 品質不足
- 不適な材質
- 冷却不足
- 不適切な形状やサイズ
- 先端部と軸部の接合不良
- 加工精度不足

装置
- 電圧の不適合
- ドライバの不良
- 電流管理エラー
- 加圧システムのエラー

数値設定
- 溶接作業時間
- 加圧力
- 電流値
- 電極交換頻度

溶接面
- 品質不良
- 汚れ/付着物
- 不均一性
適切な電極の選定チャート
