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腐食耐性金属の種類や活用用途を解説! 切削時の注意点とは?

腐食耐性金属の種類や活用用途を解説!
切削時の注意点とは?

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腐食耐性金属は酸や塩水などの腐食環境下に耐え、特性を保持できる金属です。腐食耐性金属にはSUS316やインコネル、ハステロイなどが該当し、それぞれの特徴に応じた活用がなされています。通常の金属では腐食してしまう環境、たとえば化学工業設備や海洋施設での利用が可能です。本記事では腐食耐性金属の種類を挙げ、その特徴と用途、切削時の注意点について解説します。

腐食耐性金属とは

腐食耐性金属とは、腐食に対して高い耐性を持つ金属のことです。腐食は金属が外部環境や周囲の物質の影響で変質(化学反応)する現象を指し、通常は金属の強度や機能を低下させます。特に、酸や塩水、湿度の高い環境などが金属を腐食しやすくする要因となります。

腐食しにくい金属のカテゴリー

腐食に対してどのように耐性を発揮するかで、腐食しにくい金属を3つのカテゴリーに分類できます。

■ 金属そのものが腐食しない金属

一般に貴金属として知られる、金や銀、プラチナ(白金)、イリジウム、ロジウム、パラジウムなどが該当します。分子構造が非常に安定していて金属イオンが溶け出しにくいため、腐食自体がほとんど起こりません。特に金、プラチナ、パラジウムは、硫酸や硝酸、塩酸でも溶かせない金属です。

■ 不動態皮膜を表面に作る金属

不動態皮膜とは、金属の表面に形成される極薄の膜のことです。この膜によって金属本体が腐食原因と接触するのを防ぐため、サビが発生しにくくなります。このカテゴリーに該当するのは、ステンレス鋼やアルミ合金、チタン合金、ニッケル合金などです。

■ 表面に形成されるサビが本体の腐食を防ぐ金属

表面にはサビが形成されるものの、そのサビによって本体の腐食が進行するのを防げる金属です。銅や亜鉛、あるいは耐候性鋼のような鉄鋼材料が該当します。部分的にサビがとれたり破損したりしても、露出した箇所に新たなサビが作られるため、内部への浸食がほとんど起こりません。

腐食耐性金属の有用性

日常生活や産業活動の中で、建築物の構造材や輸送機械、産業機械など、金属はさまざまな用途で使われています。腐食で劣化・破損した金属は強度が低下するため、安全性や機能性に問題が発生します。表面がサビにまみれていると外観も良くありません。また、使用環境によっては定期的なメンテナンスが難しい場合もあるでしょう。腐食に強い金属を使用すれば、点検や交換にかかる回数とコストを減らせます。以上のような理由から、腐食に強い金属の有用性は非常に高いといえるでしょう。

腐食耐性金属の種類|特徴と用途

腐食耐性金属の明確な定義はありませんが、この記事では「SUS316」「インコネル」「ハステロイ」「ニオブ」「タンタル」を耐食性に優れる金属として紹介し、それぞれの特徴と用途を解説します。

SUS316

SUS316の特徴

SUS316はクロム(Cr1718%、ニッケル(Ni1014%、モリブデン(Mo2.5%を主成分とし、腐食耐性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼です。モリブデンの添加により、SUS316は特に海水や塩化物環境において高い耐食性を持ちます。不動態皮膜が金属の表面を保護し、腐食防止の役割を果たします。応力腐食割れにも強く、溶接性も良好です。非磁性であるため、磁気を扱う精密機器周辺でも使用できます。

SUS316の用途

SUS316は、海水や塩化物環境で耐食性が要求される場面での採用が多いです。主な用途としては、沿岸部の建築部材や外壁パネル、海水を利用する工場の機器類、融雪剤に触れる可能性のある配管部材、業務用の食品設備、一般化学設備、船舶部品などが挙げられます。炭素量を減らして、耐食性と加工性を高めた「SUS316L」もあります。

インコネル

・インコネルの特徴

インコネルはスーパーアロイの一種で、高温環境下での耐酸化性、耐食性に優れ、機械的負荷にも強い金属です。ニッケルを主成分とし、用途に応じてクロムや鉄、モリブデン、ニオブなどの配合比が異なる種類が用意されています。たとえば、「インコネル600」や「インコネル625」「インコネル718」などです。

・インコネルの用途

耐熱性や耐腐食性に優れるインコネルは、航空宇宙産業や化学工業、石油・ガス産業、電力生成などの高温・高圧環境での用途に広く採用されています。ガスタービン部品や化学プラント部品、高圧化学反応室、原子炉部品、核廃棄物処理施設、油田の抽出処理システムのほか、成形用工具や熱処理治具にも適した腐食耐性金属です。

ハステロイ

・ハステロイの特徴

ハステロイはインコネルと似た特性を持つスーパーアロイで、モリブデンやクロム、鉄などを配合したニッケル合金です。インコネル以上に優れた耐食性を発揮しますが、物理的強度(クリープ強度や引張強度)では劣ります。ハステロイには「ハステロイB」や「ハステロイC」といった種類があり、それぞれ特性が異なっています。

 

・ハステロイの用途

ハステロイの高い耐食性は、特に化学産業での用途に適しています。特に化学反応器や熱交換器、化学薬品製造設備へ活用されている腐食耐性金属です。また、製紙工業施設や廃棄物処理施設、漂白設備、有害廃棄物の焼却設備、放射性廃棄物の処理施設などでも利用されています。

ニオブ

・ニオブの特徴

ニオブはバナジウム族元素に属する灰白色の金属です。多くの化学物質に対する耐食性に優れています。融点が高いため、耐熱性に関しても優秀です。加工性が良く、柔軟性と展延性も有していることから、さまざまな超合金の添加材に使われています。また、ニオブが大気圧下では9.2ケルビンで超伝導体になることも特筆すべき点といえるでしょう。

 

・ニオブの用途

ニオブは航空宇宙産業や化学産業、電子産業など幅広い分野で使用されています。ニオブを含む合金が、光学レンズや石油化学触媒、発電用ガスタービン、超硬工具などの素材に用いられています。また、フェロニオブ(FeNb)という鉄鋼添加剤として、高張力鋼やステンレス鋼などに添加される用途も多いです。ニオブが添加された鋼材は、自動車の外板パネルや排気系部品、あるいは建築・土木分野における構造材、ラインパイプなど、さまざまな製品や部材に使用されています。

タンタル

・タンタルの特徴

タンタルは銀白色の光沢を持ち、特に酸に強い腐食耐性金属です。2996と融点が高い一方で、熱膨張係数が低いという性質があります。熱伝導性や導電性、柔軟性、延性などが高いのも特徴です。加工性と溶接性にも優れるため、幅広い用途で活用できる金属だといえるでしょう。しかし、タンタルはレアメタルの一種であることから、コスト高になってしまうのが難点です。

 

・タンタルの用途

タンタルは、航空宇宙産業や化学産業、電子産業などに適用されています。また、多くのデジタル機器に搭載されている「タンタルコンデンサ」に欠かせない素材です。半導体の回路基板では、銅の拡散を防ぐバリア層の形成にも利用されます。航空機のエンジンタービンブレードの製造においても、タンタルの高い融点と耐食性が活かされています。さらに、3Dプリンタでの積層造形、化学プラントや反応容器の製造、医療用の人工関節や歯科インプラントなど、応用範囲が非常に広い腐食耐性金属です。

腐食耐性金属の切削時の注意点

ここでは、前項で紹介した腐食耐性金属について、切削加工における注意点を説明します。

SUS316切削加工の注意点

SUS316は熱伝導率が低いため、工具に熱がこもりやすいです。過度な温度上昇が起こらないように切削油やクーラントで冷却する、加工速度を抑えて温度上昇を防ぐ、といった対策をおこないます。

インコネル切削加工の注意点

インコネルは高温強度が高いため削りにくく、加工硬化や切粉の溶着にも注意しなければなりません。超硬工具や多刃工具を使用するとともに、切削条件の最適化が重要です。

ハステロイ切削加工の注意点

ハステロイも、インコネルと同様の性質を持つ典型的な難削材です。適切な加工機械や切削工具、切削条件を見極める知識と経験が求められます。

ニオブ切削加工の注意点

ニオブは加工硬化が生じやすく、粘り気も見られる金属です。切粉が付着して「構成刃先」ができてしまうと加工精度が低下します。切削油・クーラントの使用、切削速度の最適化などで対応するのが基本です。

タンタル切削加工の注意点

タンタルはニオブと似た特性を持つため、加工硬化と切粉の付着に注意が必要です。一般的には、切削速度を上げると切粉の付着がしにくくなる代わりに、加工硬化が起こりやすくなります。バランスのとれた切削速度に調整することが大切です。

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