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モリブデンは、同じく高融点金属として知られる「タングステン」や「タンタル」などと比較すると、切削性は悪くありません。
しかし脆さや粘り気といった性質を持つため、一般的な加工の難易度としては高く、難削材に分類されます。さらに、延性が低いことから切り屑が非連続となり、仕上げ面の精度悪化を招きやすいことも加工が難しい理由の一つです。
切削加工のポイント
モリブデンを切削加工する際の工具は、超硬素材のもので、中でもK種のものが適しています。セラミックス素材やサーメット素材のものは適していないため、注意が必要です。
延性の低さによる表面粗さの劣化については、適切な条件の下、湿式加工(切削油・クーラントを使用しての加工)を行うことで、切り屑の連続性が増し、改善が期待できます。
また、モリブデンは脆く、素材が欠けやすいという特徴を持っています。特に工具が素材を抜ける際が最も欠けが発生しやすいため、ツールパス(切削工具の経路プログラム)や工具の切り込み量などを工夫することが重要です。
金属モリブデンは用意に加工作業を行う事が出来ますが、体心立体格子を有する全ての金属と同じく、モリブデンには遷移温度がありますので、その温度以下では脆くて硬質のため加工性は悪い状態です。この温度以上であれば延性を帯び加工性が向上します。一方でモリブデンを再結晶温度以上に加熱すると結晶粒子が成長し組織が肥大し、強度と硬度が著しく低下してしまいます。よって板金加工作業に推奨できる温度範囲は脆さ延性遷移温度以上、且つ再結晶温度以下を推奨しております。機械加工性については鋳鉄の機械加工性と似ているとされておりが、工具の精密なセットアップが非常に重要になります。
| 原子量 | 95.95 | ||
| 融点 | K | 2893 | |
| 沸点 | K | 5073 | |
| 密度(20℃) | g/cm3 | 10.2 | |
| 熱膨張係数 | 20℃ | 10-6/K | 5.3 | 
| 20℃から1000℃ | 5.8 | ||
| 20℃から1500℃ | 6.5 | ||
| 比熱 | 20℃ | J/g・K | 0.25 | 
| 1000℃ | 0.31 | ||
| 2000℃ | 0.44 | ||
| 比電気抵抗 | 20℃ | Ω・mm2/m | 0.052 | 
| 1000℃ | 0.27 | ||
| 1500℃ | 0.43 | ||
| 2000℃ | 0.6 | ||
| 熱伝導率 | 20℃ | W/m・k | 142 | 
| 1000℃ | 105 | ||
| 1500℃ | 88 | ||
| 酸素 | 約400℃まで | 酸化物形成 | 
| 700℃以上 | WO3を形成 | |
| 水蒸気 | 700℃以上 | 酸化反応 | 
| 水素(H2) | 安定 | |
| 窒素(N2) | 1500℃以上 | 窒化物形成 | 
| 炭化水素(CnH2n) | 1100℃以上 | 炭化物形成 | 
| 一酸化炭素(CO) | 1400℃以上 | 炭化物形成 | 
| 二酸化炭素(CO2) | 1200℃以上 | 酸化反応 | 
| 二酸化硫黄(SO2) | 600℃以上 | MoS2を形成 | 
| カーボン(C) | 1100℃以上 | 炭化物形成 | 
| アルミナ(Al2O3) | 1900℃まで | 安定 | 
| ジルコニア(ZrO2) | 1900℃まで | 反応する | 
| トリア(ThO2) | 1900℃まで | 反応する | 
| 硫黄 | 600℃ | 腐食する | 
| タングステン | 2000℃ | 反応する |