モリブデンとタングステン(W)は両方とも遷移金属であり、よく似た特性を持っています。例えば、高融点で高強度であることは遷移金属の特性であると同時に、モリブデンとタングステンの共通点です。その一方で、両者には重要な違いがいくつか存在します。これらの違いを理解しておくことは、適切な素材選択をする上で重要です。
まず、モリブデンとタングステンはどちらも高い耐熱性を持っています。しかし、モリブデンの融点が約2620°Cであるのに対し、タングステンはさらに高温で約3420°Cです。タングステンの融点はすべての金属中で最も高く、超高温環境でも溶けにくい性質を持っています。
両者ともに硬度や熱膨張係数に優れ、高強度で熱変形を起こしにくい反面、難削材であることも共通します。ただし、その加工性には違いがあります。モリブデンはタグステンよりは切削しやすいですが、脆さや粘り気などに注意して加工しなければなりません。タングステンは耐摩耗性が高いだけでなく、超硬合金工具との相性も悪いため、切削加工の際には熟練の知識とスキルが必要です。
用途にも違いがあります。加工性の良さと軽量化が求められる航空宇宙産業や電子機器などでは密度が小さいモリブデンが広く採用されています。タングステンは密度が大きいためにX線やガンマ線を吸収できるため、放射線の遮蔽部品や高温炉の構造部材にも利用可能です。