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タングステン合金とは? 種類・特性・用途・将来性を解説

タングステン合金とは?
種類・特性・用途・将来性を解説

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ングステンは極めて融点が高く、強度にも優れる重金属です。これらの特性を活かしたタングステン合金は、航空宇宙分野や医療分野、スポーツ分野といった用途で幅広く利用されています。今回は、タングステン合金の基礎知識から種類と特性、用途、将来性まで、詳しく解説します。

タングステン合金とは

タングステン合金はタングステンを主成分とし、他の金属を添加することで特定の物性を向上させた合金です。タングステン単体が持っている高融点や高硬度、高耐久性といった特性を活かしつつ、加工性や電気的特性、耐食性などを改良しています。ここでは、元となるタングステンの特徴と、タングステン合金の生成について説明します。

タングステンの特徴

タングステンの最大の特徴は、融点が3422と非常に高いことです。これは全金属中の融点として最高温度であり、高温環境下におけるタングステンの物的安定性に寄与しています。また、高強度で摩耗に強く、低熱膨張率のため高温環境下でも形状を保つことができます。さらに、19.25g/³と高密度で重いことや、X線やγ線などの放射線を効率的に遮蔽することも、ほかの金属では得られにくい性質といえるでしょう。これらの特性により、タングステンは一般的な工業用材料から放射線遮蔽材のような特殊な用途まで、幅広く利用されています。

タングステン合金の生成

タングステン合金の生成には、主に粉末冶金技術を用います。タングステン粉末に特性を追加したい金属粉末を混合し、高温で焼結させる方法です。タングステンは高融点で溶解させることが難しいため、この特別な製造プロセスが採用されています。

 

添加する金属の種類や比率を変えることで、密度や硬度、伸びなどの性質を調整することが可能です。タングステン単体では実現しにくい機械的特性や、特定の用途に適した物理的特性を持つ合金が生成できます。

タングステン合金の種類と各特性

タングステン合金にはさまざまな種類があり、それぞれ特有の性質を持っています。これらの合金の多くは特定の用途を目的として開発されており、各産業での活用が広がっています。

タングステン・レニウム

タングステン・レニウムは、高温での強度と延性が求められる用途に適しています。タングステンは硬い反面、延性に乏しく脆い金属です。レニウム(Re)を添加することで、タングステンの脆さを軽減し、加工性や靭性を高めます。この合金は航空宇宙産業でのジェットエンジンやロケットノズルの製造に利用されるほか、核融合炉の内壁素材、高温環境下で使用される電子部品、医療用X線管のターゲット素材としての活用もあります。また、タングステン・レニウム製の熱電対は、高温の酸化性雰囲気中でも長時間の使用が可能です。

モリブデン・タングステン

モリブデン・タングステンは熱伝導率と低熱膨張率に優れ、半導体産業での露光装置やスパッタリングターゲットなど、高温下での精密機械部品製造に用いられています。モリブデンはタングステンと比較して軽量でありながら、高強度で熱変形が少ない性質を持つ金属です。その特性を受け継ぐモリブデン・タングステン合金は熱の影響を受けても安定性が高く、高温環境で使用する構造材料や熱交換器の材料として最適です。モリブデンの添加は合金の硬度や融点を調整可能にし、加工性も向上させます。優秀な各特性と加工性を持つモリブデン・タングステンは、特に航空宇宙産業や電子機器の製造で利用されています。タングステン・レニウムと同様に、熱電対にも適した合金です。

タングステン・トリウム

タングステン・トリウムは、放射性元素であるトリウムを含むため取り扱いには注意が必要です。トリウム添加により電子放出が容易になるため、発光源や高温炉の加熱部品に適しています。また、TIG溶接の電極材料としても優れた性能を発揮します。近年では、タングステン・トリウムの放射性リスクを避けるため、セリウムやランタンなどの非放射性材料を用いた電極への代替が進行中です。

タングステン銅

タングステン銅は、タングステンの優れた硬度と銅の高い熱伝導性を兼ね備えたタングステン合金です。放電加工電極や真空遮断器、高圧スイッチなど、電気特性や熱特性が求められる用途に適しています。高温および高電圧環境下で安定した性能を維持することから、耐久性と効率性を重視した設計にも対応可能です。ただし、タングステン合金は一般的に高価であるため、要求性能と生産コストを考慮して最適なグレードを選択する必要があります。

タングステン銀

タングステン銀は、タングステンの耐摩耗性と銀の電気伝導性を組み合わせたもので、電気接点材料に使用されます。回路遮断器などの各種遮断器、抵抗溶接電極、耐摩耗シャフトといった耐アーク性と低接触抵抗が要求される用途に適した合金素材です。高い耐久性と信頼性が求められる電子機器の部品に利用されることがあります。

タングステン合金の用途

タングステン合金各種の特性を活かして、多岐にわたる分野において重要な役割を果たしています。タングステンの特性である融点と硬度の高さをベースとして、用途ごとに最適なタングステン合金が採用されます。

航空宇宙産業

・飛行機やヘリコプターのバランスウェイト

・ロケットエンジンのスラスターノズル

・衛星の放熱板およびX線・放射線の遮蔽板

医療分野

・シンチレーション検出器のX線防護シールド

・放射線治療用コリメーター

・カテーテル用タングステンリボン

スポーツ用品

・ダーツのバレル(ウェイト)

・ゴルフクラブのヘッド素材

・レーシングカーやヨットのバラスト

電子産業

・スパッタリングターゲット(薄膜コーティング材料)

・半導体露光装置のミラー

・真空蒸発源フィラメント

製造業

TIG溶接電極

・高速切削工具の先端材料

・プレス成形用金型

タングステン合金の用途

世界のタングステン市場は2031年に25USDまでに達すると予想されており、約11USDだった2021年から10年間で2倍以上に成長する見込みです。

 

タングステン合金は、その優れた特性を活かし、多くの先進的産業で重要な役割を果たし続けることが期待されています。特に、航空宇宙、防衛、医療技術の分野では、タングステン合金の持つ高い耐熱性、高温強度、放射線遮蔽能力などが継続的に求められることでしょう。加えて、電気自動車や再生可能エネルギーといった環境技術の進展に伴い、タングステン合金の電気伝導性や耐久性が、これまで以上に重宝される可能性が高いです。

 

また、ナノテクノロジーや新材料の研究開発が進む中、タングステン合金の活用によって従来では困難だった形状やサイズを実現してきました。新たなタングステン合金が開発されれば、未知の性質や機能を発現させる可能性も秘めています。次世代の技術革新を支える基盤材料のひとつになりうる金属です。

 

技術の進歩とともに、タングステン合金の製造コストを削減する新しい方法も研究されています。タングステン自体の価格の高さがネックになっている実情があるため、製造コストの低価格化が進行すれば、より広範な産業でのタングステン合金の採用を促すことも可能です。

 

将来的には、あらゆる分野でこれまで以上に製品の高性能化や高耐久化が要求されるでしょう。それを実現する金属素材として、タングステン合金の重要性はますます高まっていくはずです。

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